出雲の小さな居酒屋「いつもクロス」は、夜になると不思議な客たちでにぎわう。 看板犬のポメラニアン、ハッピーは常連たちの人気者で、なぜか両前足でジョッキを掲げて「かんぱーい!」と叫ぶのが日課だった。犬がビールを持つなどあり得ないはずなのに、誰も驚かない。むしろそれがこの店の「いつも満タン」な雰囲気を作っていた。
ある晩、店の天井から突然バナナが降ってきた。しかも束ごと。客たちは大騒ぎしながらも、なぜか笑顔でそれを受け止める。 「サービスか?」 「いや、神様の気まぐれだろう」 そんな冗談が飛び交う中、ひとりの客がふと気づいた。
「……おい、なんで片方だけなんだ?」
確かに、降ってきたバナナの房は、左右のうち片側だけがごっそり抜け落ちていた。残りはどこへ行ったのか。店内は一瞬、静まり返る。
そのとき、奥の席から奇妙な人物が立ち上がった。頭が四角いブラウン管テレビになっており、画面には大きく「正解!」の文字が点滅している。 彼のシャツにはバナナ柄が散りばめられ、手にはハッピーと同じようにビールのジョッキが二つ。
「片方だけ残されたのは、選ぶためだ」 テレビ頭の声は、スピーカー越しのようにざらついていた。 「満タンの宴も、飛び交うバナナも、すべては“どちらを掴むか”を試す問い。正解は……君たちが決める」
そう言うと、画面に再び「正解!」の文字が輝き、店内は爆笑と拍手に包まれた。 ハッピーは尻尾を振りながら、もう一度ジョッキを掲げる。
「かんぱーい!」
その声に合わせて、誰もが笑い、飲み、そして片方のバナナを手に取った。 ――正解かどうかは、誰にもわからない。ただ、その夜が最高に楽しかったことだけは確かだった。

4コマ漫画を元にした短編小説
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